描くちから=見るちから
学生時代、デッサンの授業で講師にこんな事を教えて頂きました。
「描くちからというのは、見るちからだよ。」
デッサンや精密画(※1)に関して言えば、その通りだと今でも思います。実際に「絵が苦手」、「上手く描けない」と言っている人ほど、描きたいものを細部までよく見ていないことが多いです。
(※1)対象を細部にまで精密に描写する絵。
針金を一本描くにしても、単なる一本の「線」ではなく、よくよく見ると「光の当たり方で艶(つや)のある箇所ない箇所」、「汚れ」、「断面の切れ方」、「曲がり方」、「折れ方」、「地面への影の落ち方」など様々な描写要素があります。
自分の描く絵に対しても、「筆圧」や「線の長さ」、「曲がり方」、「角度」など神経質なくらい見比べれば見比べる程、当然モチーフと絵は近くなっていきます。正確に、丁寧に「見るちから」が付けば、それが「描くちから」になっていくのです。
ペン画の描き方 -フェンスを描いてみよう-
では、実際に針金で作られたフェンスの一部を描いてみましょう。
何も意識せず、ぴゃぴゃっと描くとこんな感じでしょうか。
針金の立体感も無ければ、交差する感じもない。「フェンス」と言われればそう見えなくもないですが、やはりこれでは落書き以下。絵に「気持ち」もこもっていません。
もう少しだけ丁寧に描いてみると、
う~ん。。。針金の太さが表現され、少しはフェンスっぽくなりましたが、まだまだ丁寧な絵とは言えないレベルです。
次は、一から丁寧に描き進めていきましょう。
アタリを付ける(カタチを取る)
いきなりペンで描くのではなく、まず鉛筆でアタリを取っていきます。
線が等間隔で並んでいるか、直角に近い角度で交差しているか等、対象をよく見て全体のバランスを取り、この時に、紙に対してどのくらいの大きさで、どのくらいの範囲まで描こうという完成時の構想も考えておきます。
輪郭線を描く
この作業は全体を描いてから、細部を描き込む方法や、局部的にしっかり描き込んだ箇所を広げていく方法など、人それぞれの描き進め方がありますが、フェンスの様に「等間隔の連続」が続くモチーフは全体を先に描いておくことをお勧めします。局部的に描き込んでいった結果、ふと全体を引いて見てみると「バランスが悪くなっている」なんてことがある為です。
描き込む
針金が交差している箇所の影の付き方や、右上から光が当たっている事から、反対の左下に多くの影が付いたり、汚れ、傷などを描き込んでいくと、こんな感じでしょうか。
うん。だいぶそれっぽくなりました。
ペン画の難しい(面白い)ところは、描き終わりのタイミングです。消しゴムで消せない分、描けば描くほど絵は真っ黒になっていき、後戻り出来なくなります。
自分の表現したいタッチ、画風に合わせて、「このくらいの描き込みで止めておこう」というタイミングの見極めもぜひ身に付けていってください。
描き終わりのタイミングは、それこそ数をこなすとだんだん掴めてきますが、私もよく「ありゃ、描き過ぎた」なんてことになります。ホント修行あるのみです。
今回はこのくらいにさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。
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